既定の答え — H.264を収めたMP4
このガイドから1つだけ持ち帰るとしたら、これです。H.264映像とAAC音声を収めたMP4は、ここ10年ほどに作られたほぼすべての機器で再生できます。ブラウザ、スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機、編集ソフトのいずれもです。H.264のハードウェアデコードはほぼすべてのチップに組み込まれているため、古い端末や安価な端末でも再生は滑らかで、バッテリーの持ちも良好です。「どの形式で送ればいい?」「どの形式でアップロード・保存すればいい?」と聞かれて特別な事情がないなら、答えは「MP4」で正解であり、そこで話は終わりです。
だからこそ、よく使われる変換はどれもMP4へ向かっています。MKV → MP4、WebM → MP4、MOV → MP4はいずれも、より専門的な世界にある動画を、誰でも扱える世界へ連れ出すために存在します。(厳密にはフォーマットはコンテナで、H.264はその中に入るコーデックです。この区別はコンテナとコーデックのガイドで10分ほどかけて理解する価値がありますが、フォーマット選びの場面では「MP4」という略し方で十分通じます。)
本当に例外となる4つのケース
WebM — 自分のウェブサイトで動画を配信するとき
WebMはウェブネイティブなフォーマットです。オープンでロイヤリティフリー、VP8/VP9コーデックを軸に作られており、H.264のMP4と同等の画質なら一般に20〜40%小さくなります。ヒーロー動画、背景のループ、デモクリップなど、自分で管理するページであれば、この差はそのまま帯域の節約と表示の高速化になります。弱点は到達範囲です。SafariやiOSでの対応は不安定で、古いテレビは無視してしまうため、堅実なやり方はMP4のフォールバックを添えてWebMを配信するか、あるいは細かく考えたくなければMP4だけにすることです。
MOV — Appleの世界やプロの編集環境にいるとき
MOVはAppleのQuickTimeコンテナです。iPhoneの標準的な出力形式であり、Final Cutをはじめとするプロの編集環境にとって最も摩擦の少ない入力でもあります。この用途では、ProResのような高品質な中間コーデックを収めることもよくあります。このワークフローの中にいる間は、MOVのままにしておきましょう。外に出ると、MOVはおおむね「互換性の低いMP4」のように振る舞います。両者は近い親戚だからです。MOV → MP4が最もよく使われる変換の1つなのは、まさにこのためです。Apple製以外の端末へ向かうiPhoneの映像、という場面ですね。
MKV — 共有ではなくアーカイブするとき
MKVはアーカイブ向きのコンテナです。オープンで実質的に制限がなく、複数言語の音声、いくつもの字幕トラック、チャプター、そしてあらゆるコーデックを1つのファイルに収められます。VLCのようなデスクトッププレーヤーは完璧に扱えますが、ブラウザ・スマートフォン・多くのテレビは扱えません。つまり、保管用としては優秀でも、共有用としては不向きです。MKVをマスターとして持っておき、必要になったときにMP4のコピーを作るのが良いやり方です。(MKVからMP4への変換は、再エンコードせずストリームを詰め替えるだけで済むことも多く、その場合コピーは高速かつ無劣化で作れます。)
GIF — 届け先が画像しか受け付けないとき
厳密には動画フォーマットではありませんが、チャット・ドキュメント・READMEに載せる短いクリップでは動画と競合します。話題として十分に大きいため、独立したガイドを用意しています。
届け先別の早見表
| 届け先 | フォーマット | ひとこと |
|---|---|---|
| 個人に送る | MP4 | 相手がどんな端末でも再生できる |
| SNS・動画プラットフォームへの投稿 | MP4 | どのみち再エンコードされるので、高画質で投稿する |
| 自分のウェブサイト | WebM(+ MP4のフォールバック) | 対応環境ではファイルが小さくなる |
| Final Cutなどプロ向けツールでの編集 | MOV | そのワークフローのネイティブ形式 |
| 長期アーカイブ | MKV(または元ファイルのまま) | マルチトラックでオープン。必要に応じてコピーを変換 |
| チャットや資料に画像として貼る | GIF | 短く、小さく、無音 |
| 古い端末や不明なプレーヤー | MP4(H.264) | 互換性が最大の組み合わせ |
H.265やAV1、そして「これから」はどうなる?
新しいコーデックの圧縮性能は確かに優れています。H.265とAV1はH.264と同等の画質をおよそ半分のビット数で実現し、AV1はロイヤリティフリーで、ストリーミング事業者やブラウザベンダーの強力な後押しを受けています。足りないのは、10年かけて全世界の端末に行き渡ったハードウェアデコーダーです。古い端末や安価な端末では、デコードが遅い、発熱する、あるいはまったく再生できないという事態になります。再生環境を自社で制御できるプラットフォームの内側では非常に優秀で(YouTubeやNetflixは日常的に配信しています)、不特定の相手や端末に手渡すファイルとしては、まだ賭けの要素が残ります。現実的な見通しとしては、AV1が今後数年かけて既定の座を受け継いでいくでしょう。視聴者の端末が確実に対応しているとわかるまでは、MP4に収めたH.264が、恥をかかずに済むフォーマットであり続けます。
フォーマットは箱を変えるものであり、中身の大きさや見た目を決めるのは設定です。届け先が決まったら、画質はほぼ数値1つで決まります(CRFとは?をご覧ください)。サイズは短いチェックリストで対応でき、動画ファイルを小さくするガイドで解説しています。